突然襲ってくる激痛に、救急車で運ばれる患者さまも多い尿路結石。泌尿器系の専門医療提供に長い歴史を持つ東京腎泌尿器センター大和病院では尿路結石専門外来「尿路結石・万よろず 相談所」を設け、予防・治療に関するさまざまな相談から内視鏡手術「TUL」と「PNL」、さらに2つを併用した最新治療まで行っています。詳細を泌尿器科医長の大岩祐一郎医師にうかがいました。
東京腎泌尿器センター大和病院 泌尿器科 医長 大岩 祐一郎

- 日本泌尿器科学会専門医・指導医
- 医師緩和ケア研修会修了
腎臓や尿管に石が できてしまう病気

13㎜の結石をTULで破砕して回収

ー 東京腎泌尿器センター大和病院には「尿路結石専門外来」があり「尿路結石・ 万よろず 相談所」を謳っておられます。よく背中や脇腹、下腹部の激痛で七転八倒すると聞きますが、どんな病気なのでしょう?
大岩 腎臓から尿道までの尿路に結石が生じる病気で、結石のある場所によって「腎結石」「尿管結石」「膀胱結石」「尿道結石」の4 種類に分類されます。一番多いのは 尿 管 結 石で、腎臓内にできた結石が尿管に落ちてきて詰まってしまうもの。結石が尿管を傷つけるのはもちろん、尿がスムーズに出ないため腎臓が腫れ上がり(水腎症)、尿路が痙攣を起こして強い痛みが生じます。血尿が出ることも少なくありません。
結石が尿管から膀胱の入口に至ると、頻尿、残尿感、排尿痛など膀胱炎に似た症状が。尿道結石では、尿道が長く、かつ前立腺肥大などで尿道が狭くなっている高齢男性は要注意。強い排尿痛を起こしやすく、尿道が完全に塞がる「尿閉」では緊急処置を要します。
ー なぜ結石ができるのですか?
大岩 腎臓は血液中の老廃物をろ過して尿を作りますが、尿の成分バランスが崩れると、カルシウムやシュウ酸、尿酸などが結晶化。結合して結石となります。大半は腎臓内で発生しますが、尿管や膀胱に落ちていく過程で徐々に大きくなることも。
本来は微細な結晶レベルで尿に混ざり排泄されるはずが、栄養バランスの悪い食生活や運動不足、生活習慣病の諸症状が悪影響を与えているという説が一般的です。細菌感染や、稀に遺伝による代謝異常が関与する結石もあります
ー 患者さまは痛みや排尿トラブルで受診されるのですね?
大岩 自覚症状のある方は半数ほどですね。尿管結石は、結石が自然排石されなくとも、 1 ヵ月ほどで痛みだけは自然におさまります。このため水腎症が慢性化しやすい。健康診断の腹部超音波検査で腎臓の腫れを指摘されたり、倦怠感や
微熱で腎臓疾患を疑われたりして来院するケースも多いのです。
尿管結石をうっかり放置すると、腎臓機能が低下する「腎不全」に至る危険がありますし、細菌感染で「腎盂腎炎」を発症するリスクもある。もし敗血症を起こせば命にかかわります。
ー では検査と治療法について教えてください。
大岩 検査の主流はCT (コンピュータ断層撮影法)。腎臓から尿道までを細かく輪切り状に X 線撮影し、結石の個数、位置、大きさ、形状を把握。さらに結石の成分と硬度も予測し、治療法選択に役立てます。
個人差はありますが、結石が10㎜以下の場合は、消炎鎮痛剤や尿管を広げる薬、痙攣を抑える薬などを処方しながら、自然排石を待つ「保存療法」を選ぶケースが多いでしょう。 1 〜 2 ヵ月で排石がみられないケースや、結石が10㎜以上の場合は積極的治療を検討します。
レーザーを用いる 内視鏡下手術で 結石を除去

ー 内視鏡下で行うTUL(経尿道的腎尿管結石破砕術)が、注目を集めていると聞きます。
大岩 内視鏡下の尿路結石手術には、 TUL と、 PNL (経皮的腎尿管結石除去術)の2 種類があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
TUL は、尿管から細くしなやかな内視鏡を挿入し、レーザー(ホルミウム・ヤグレーザー)を結石に照射。細かく破砕して附属のバスケットで回収するものです。 4タイプの結石すべてが対象で、尿路全体をカメラで丁寧に確認できること、比較的硬い石でも砕けること、複数個の結石治療が可能であること。かつ結石もその場で除去できるので、治療回数を最小限に抑えることができます。
デメリットは、どうしても尿管に負担をかけること。尿管は尿路の中でもデリケートな器官で、万一傷つけると狭窄などの合併症を起こしかねません。また術者の技量により結果が左右されるので、経験豊かな医療機関を選ぶ必要があります。


ー では、PNLは?
大岩 背中から腎臓に6〜10㎜ほどの穴を開け、そこから内視鏡(腎盂鏡)を挿入し、レーザーで腎臓結石を破砕するものです。結石は吸引カテーテルで回収します。TULでは難しい腎臓深部の大きな結石、特に腎盂や腎杯を広く埋めつくす「サンゴ状結石」の除去に卓効があり、おかげで腎臓の切開手術が不要となりました。
TULと比べれば、カメラの操作範囲が狭く、出血が若干多い、入院期間が長いなどがデメリットでしょう。
ー TULのほうが、適応範囲が広いのですね。
大岩 多くの医療機関でTULが主流。厚生労働省の調査(2019年)では全国45,683例で、かつて多数派を占めたESWL(体外衝撃波結破砕術。イラストと解説を参照)の18,153件を凌駕しました。
当院の2019年度のTUL実施数は346例で全国5位。一方、腎臓結石を対象とする PNLは、実施できる医療機関が限られるため、全国2,309例中161例で、第1位です。
さらに2021年4月よりTULとPNLの併用療法=TAP(TUL Assisted PNL)が健康保険の適用となりました。当院は全例でこの併用療法を採用しています。双方のデメリットを補い、体に優しい結石治療が可能です。

ー 具体的に説明していただけますか?
大岩 腎臓と尿管に 1個ずつ結石があり、水腎症を起こした患者さまがいるとしましょうか。腎臓が腫れているとその圧力で尿管は歪み、内視鏡を挿入しにくくなっています。
そこで PNLで腎臓内の尿を抜き、結石を粉砕・回収。尿管を安定させたあと、TULで尿管の結石をスペースにゆとりのある腎臓に移動させます。この結石を破砕・吸引力の高いPNLで処理するのです。尿管への負担は最小限で済む。今の例以外でも大きな腎結石や尿路の奇形など尿路のあらゆる状況に対応できるので手術中の状況に応じてベストチョイスができ、低侵襲な治療につながります。
ー なるほど。でもベストチョイスの治療を受けても、尿路結石は再発しやすいとか?
大岩 はい。5年以内に約50%の人が再発するといわれています。生活習慣病と関係が深いので肥満、高血糖、糖尿病、高血圧、脂質異常症、痛風、骨粗しょう症を指摘されている方は特に気をつけましょう。
まず塩分と糖分を摂り過ぎないこと。尿から過剰な塩分と糖分を排出するとき、一緒にカルシウムも尿に出てしまうため、結石の原因となります。動物性脂肪の摂り過ぎもNGです。
尿の流れをよくするため、食事とは別に1日2リットルの水を摂ってください。体も積極的に動かすこと。運動不足だと骨が弱くなり、カルシウムが血液中に溶け出します。
再発を繰り返す方には、カルシウムの尿中への排出を減らす薬や、尿のpHを整える薬を処方することがあります。

ー なるほど、「尿路結石・万相談所」ですね。
大岩 生活指導と予防、的確な診断と、治療法の選択及び安心・安全な施術、再発への対応。切れ目のない医療の提供と共に、他院での治療に迷いのある方にはセカンドオピニオンも行っています。ぜひ気軽にお訪ねください。
ー 頼りにさせていただきます。ありがとうございました
東京腎泌尿器センター大和病院

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