オシゴトいろいろ

子どもたちの言語障がいやことばの遅れを支援

ことばの問題は多種多様

「言語聴覚士」は、聞く・話すなどのことばの障がいや、嚙む・食べるなど嚥下障がいを持つ方の支援を行う専門職です。
私はリハビリテーションセンターで15歳までの小児を対象に、ことばの問題に取り組んでいます。
具体的には「構こうおん音障がい」「吃きつおん音」「特異的言語発達障がい」などのお子さんを多く診ています。
「構音」とは舌や唇、軟口蓋、下あごを使って日本語の“音”を作ること。先天的な口腔の形の異常や、脳神経の病気などで構音障がいになる人もいますが、当院に来院される構音障がい児の多くが「機能性構音障がい」であり、明確な原因がないのに音を上手く作れない子どもたち。タ行とラ行が置き代わる、発音の誤りやクセが治らないなどの症状があります。
舌や口の周りの筋力トレーニングや使い方の基本、聞きとりと発音の訓練により、1年ほどで改善する例が多いのですが、個人によって目標期間は大きく変わります。「吃音」は「ぼく」が「ぼ、ぼ、ぼく」になるなどのいわゆる“ドモリ”。3歳ごろから顕在化し、成人以降も悩む方が多いです。
呼吸が下手で浅いケースが多いため、ゆっくり吸う・吐く練習をする一方、優しく柔らかな話し方を学びます。『くまのプーさん』のイメージかな。せっかちなティガーと対照的に穏やかでしょ。
「特異的言語発達障がい」は運動発達に遅れはないけど、言語発達に遅れを認める症例です。ニャーニャー鳴く可愛い動物を目で見て理解しているけど、「猫」ということばとリンクしない。「あれ、それ」になったりします。文字の読み書きが不得手な学習障がい(LD)と重なるケースも。絵カードを使うレッスンなどを行い、文字やことばを覚え、本人の“辞書”が増えていくように成長を促します。いずれも本人が安心してお話を楽しめるようにするのが大切。保護者と学校の連携、お友だちの理解を促すことも私たちの役目です。


IMSリハビリテーション学会で発表

子どもたちの未来のために

私は現在、診療の傍ら、北里大学大学院医療系研究科修士課程で学んでいます。病院で会う構音障がいの子どもたちは、手先が不器用で、姿勢が悪く運動も苦手な例が多いんです。臨床的に相関関係があるのか? あるとしたらことばの訓練と一緒に、作業療法や理学療法を実施したら、相乗効果が望めるのか? それが研究テーマです。一人でも多くの子どもたちが、ことばの問題をクリアし、周りの人々とコミュニケーションを楽しんでほしいと願っています。


口に含み、舌で丸い凸部を押しつぶして舌の筋肉を鍛える用具。色によって硬さが異なる

ことばを覚えるためのカード。それぞれの名称や、野菜はどれ? などカテゴリー分けを学習

言語聴覚士とは?

言語障がいや聴覚障がい、ことばの発達の遅れ、嚥下障がいなどに対処する専門職。
有資格者は約3万6千人(2021年3月)。認定を受けた大学や専修学校で学んだのち、国家試験に合格する必要がある。
一般社団法人日本言語聴覚士協会 

横浜旭中央総合病院