オシゴトいろいろ

栄養科の組織力を高め 経営に貢献

栄養科の課題と目標

「栄養経営士」とは、病院などの組織の中で、栄養部門を管理・運営するマネージャー職のための資格です。
私自身、管理栄養士として長く現場の経験を積んできましたが、管理職の立場で必要とされる能力はそれとは異なります。
栄養科全体の力量と貢献度を高めると同時に、個々の人材の適材適所を見極め、スキルを磨く。いわば“経営センス”が問われます。
そこで栄養科を4つのチームに分け、活動目標を設定しました。
❶食事サービスチーム:入院食に選択食と個別食を導入。前者は食事を楽しんでいただくメニュー。
後者はたとえば食欲や嚥えんげ下力の落ちた緩和ケア病棟の患者さまにとって食べやすく、且つ食べたくなるメニューや消化器外科の周術期に合わせたメニューなど。選択肢をできるだけ増やし、患者満足度を高めていきます。
❷セイフティマネージメントチーム:食の安全・衛生管理。食材の保管から器具の消毒、厨房の清掃など基本を見直し、インシデントに備えレポートをまとめます。新型コロナウイルス感染症対策としても有効です。
❸栄養指導チーム:患者さまの病態に合わせた栄養指導の成文化。当院は特に糖尿病や人工透析に通う腎臓疾患の方が多いのですが、担当栄養士によって指導が異なっては患者さまが混乱します。マニュアルやパンフレットを作成し、情報を共有します。
❹臨床栄養技術向上チーム:医療も栄養学も日進月歩。情報を収集し研究会を開きます。また診療報酬改定に合わせた取り組みも必須でしょう。令和2年度は栄養情報提供加算が施行され、当院の行った入院中の患者さまへの栄養指導を、連携する地元クリニックや介護施設に正式な書面で申し送ると、加算の対象に。患者さまの退院後の健康管理にも役立ちます。


全国栄養経営士のつどいでプレゼンテーターを務める

成果を梃てこにみんなのやる気を引き出す


チームリーダーを集めてミーティング

4つの目標について、チーム内で、あるいはチームリーダー同士でミーティングを重ねるうちに、科内の風通しはグンとよくなりました。
改善点と自分の役割がきちんと見えてきて、仕事の効率がアップ。何より日々の努力が、患者さまからの高評価につながるようになり、モチベーションを上げることができたと思います。
この他の成果としては、厨房の労働環境の改善。調理補助員の増員で、正職員がメニュー考案など専門業務に十分な時間が取れるようになりました。
早番・遅番の増員で時間外労働も減っています。障がい者病棟など専門性の高い分野においては、多職種の相互理解と連携が重要です。
特に重度の糖尿病足病変や、長期横おうが臥に伴う褥じょくそう瘡など皮膚トラブルのある方への栄養補給はタンパク質の適切な補給などとてもデリケート。医師・看護師との綿密な打ち合わせが欠かせません。経管栄養の栄養剤管理も栄養科が行っており、業務の専門性が評価されています。
私が栄養経営士の資格をとったのは2020年。栄養科のメンバーの団結力で、結果が出せるようになりました。
IMSグループの会議や学会、全国栄養経営士のつどいなどの催しもので、発表する機会も増えています。栄養科の立場で、患者サービス向上を実践し、結果として病院経営にも貢献していく。これからもわが栄養科は歩みを止めません。

栄養経営士とは?

栄養部門のチームマネジメントに関する臨床スキル、コミュニケーションスキル、コンプライアンス、人材育成など多岐にわたる知識を習得し、栄養管理の経営を担う専門職。管理栄養士として2年以上の勤務経験のある者が「栄養経営士」資格認定基礎講座を受講後、認定試験に合格して認定される。
一般社団法人日本栄養経営実践協会 

春日部中央総合病院