2015年、厚生労働省は事業者を対象とする改正労働安全衛生法に「メンタルヘルス対策の義務化」を盛り込みました。背景には、仕事や職業生活で強いストレスを感じる労働者の割合が50%を超えるという厳しい現実があります。「スマイルクリニック イムス東京」は日本屈指のオフィス街・日本橋に2024年7月開院。心の悩みをもつ患者さまに寄り添い、企業との橋渡し役となりスムーズな社会復帰を支援します。院長の木下徳久医師に詳細をうかがいました。
医師紹介

スマイルクリニック イムス東京
院長
木下 徳久 医師
- 日本精神神経学会専門医医
- 精神保健指定医
働く人の心の悩みに耳を傾け、丁寧に診療
ークリニックがオープンしておよそ8ヵ月。どのような患者さまが多いのですか?
木下地域柄、ビジネスパーソンが大半です。年代は中高年より20
〜30代が多く、若干女性が目立ちます。私は横浜市の中核病院の精神科部長として、長らく働く人のメンタルヘルスに携わり、企業や官公庁の精神科嘱託医を務めてきました。日本橋は伝統の老舗と、ハイテクな高層ビルが混在する魅力的な街。この地で患者さま一人ひとりと真摯に向き合い、丁寧で正確な診断と適切な治療の提供を基本理念としています。
ー職場のメンタルヘルスでは「適応障害」をよく耳にします。
木下一般に心の問題で休職する方が事業者に提出する診断書は、8割が「適応障害」といわれます。適応障害は、長時間労働や難しいプロジェクト、人間関係の軋轢など過度の「ストレス」が原因で起こる疾患。〝ビジネスパーソンあるある〞ですから当院でも一番多い症例です。主訴は、抑うつや不安、無気力、不眠などですね。
ただし症状は「うつ病」「双極性障害」「不安障害」などの疾患と共通項があり、大人の「発達障害」が隠れているケースもあります。複数疾患の併存例もみられるので、専門医はWHO(世界保健機関)のICDや米国精神医学会のDSMなど国際的な診断基準に準拠して診察を進めます。慎重な鑑別判断が欠かせません。
ーどのような時に精神科クリニックを受診するとよいでしょうか。
木下 IMSグループの相談窓口「イムス総合サービスセンター」ホームページにある「健康セルフチェック」には精神疾患も用意してあり、病気の疑いの有無はある程度確認できます。手がかりになりますから、ぜひお試しください。
一般には落ち込みや不安、イライラ、不眠など辛い気持ちがなかなか治まらず、明らかに今までの自分とは違うと感じたら受診をおすすめします。涙もろい、暴飲暴食、無断欠勤、ケアレスミスの頻発、不用意な喧嘩など。同僚や上司も気づいているかもしれませんよ。
ー適応障害とうつ病は、似ている印象がありますが?
木下違う疾患です。適応障害は原因となるストレスがなくなれば、おおむね6ヵ月で寛解するとされ、環境調整が有効に働きます。
一方うつ病は、ストレスが引き金となることはありますが、特別な出来事がないまま発症する例も少なくありません。抑うつや不安が1日中かつ2週間以上続く。電池が切れたように気力を失い、好きだった音楽や趣味に反応できない、食べられない、眠れない。自分を責める気持ちが強く、死にたいと思う重篤な症例もあります。
主な精神疾患表(P3)にありますが、いずれも経験豊富な医師による正しい診断と適切な治療が必須です。
薬物療法とカウンセリングで患者さまを親身に支援
ースマイルクリニックを受診すると、どのようなプロセスで治療するのでしょうか?
木下初診では問診に1時間以上かけ、症状や悩み、職場環境、家族や生育歴などをうかがいます。必要に応じて臨床心理士による心理テストも提案。これは患者さまの性格や思考の方向、たとえば生真面目で責任感が強すぎる、物事を悲観的に考えがちなどの情報が得られ、今後のカウンセリングに有用です。発達障害の有無もテストでチェックできます。
ー会社とも連絡をとりますか?
木下会社の産業医の紹介受診であったり、個人でも患者さまが希望されれば、患者さまの同意に基づいて企業の人事部門や上司などと連携していきます。休職を必要とする症例が多いですから、企業サイドも今後の復職スケジュールや支援体制構築に情報共有は欠かせません。ただ企業も患者さまも事情はさまざまですから、プライバシーに配慮しながらケースバイケースで対処します。
ー薬物療法も大事な柱ですね。
木下ヒトの精神活動には脳内で情報伝達を媒介する「神経伝達物質」が大きくかかわっています。その種類は主なものだけでも30種類以上ありますが、精神疾患で重視されるのは精神の安定に働く「セロトニン」、報酬系(やる気)を活性化する「ドーパミン」、ストレスに対抗する「ノルアドレナリン」など。適応障害やうつ病で気持ちの落ち込みの大きい方はセロトニン不足が指摘されており、セロトニンを増やすSSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)などが「抗うつ薬」としてよく処方されます。
ほかにもドーパミン受容体にはたらきかける「抗精神病薬」や、気分の波幅を狭める「気分安定薬」などさまざまな薬剤があり、疾患と患者さまの症状に合わせ、慎重に処方します。
ー精神科のお薬は、副作用があると誤解する方が多いとか。
木下どんな薬剤も副作用はゼロではありません。しかし新しく登場する薬は副作用を減らす改良が進んでおり、きちんとした専門医に処方を受ければ、過剰な心配は無用と考えます。
うつ病を例に取れば、抗うつ薬の薬効で気持ちを確実に引き上げることができます。心にゆとりができれば自分の環境を冷静に眺められ、医師や臨床心理士のカウンセリングもスムーズに進む。凝り固まった辛い思いをほぐすことができるのです。
ークリニックの治療は、薬物療法と精神療法(カウンセリング)の二本柱なのですね。
木下カウンセリングの目的の一つは環境調整、職場や家庭などの問題点をクリアにし、解決する方法を一緒に考えること。可能ならご家族にも来院いただき、理解が得られるよう医師が介入することもあります。
もう一つは本人の性格や思考を客観的・論理的に眺める習慣を身につけること。適応障害やうつ病
の方はネガティブ思考である傾向が強く、人付き合いや社会生活につまずくケースが目立ちます。発想の転換を図り、前向きに人生に取り組む。そのきめ細かな心の支援が精神科医療の役目の一つです。
ー一歩一歩、お医者さまが寄り添って背中を押してくださるのですね。
木下快方への手掛かりがつかめたら、生活のリズムを整え、生活の記録をつけることから始めます。ウォーキングなどの軽い運動、親しい人との語らい、音楽を聴くなどの趣味を無理のない範囲で取り戻せれば、あと一息ですね。
職場復帰を望む方には、必要に応じ仕事のシミュレーションなどを行う「リワークプログラム」 施設を紹介することもあります。
ー月経の前だけ精神が不安定になる疾患があると聞きました。
木下月経前不快気分障害(PMDD)ですね。排卵から次の月経までの期間は女性ホルモン(黄体ホルモン)の影響による倦怠感、むくみ、便秘などの月経前症候群(PMS)を経験する女性は少なくありません。その約5%にうつ気分や不安、イライラなどの強い精神症状が発現します。幸いSSRIの服用がよく効き、当院では漢方薬を併用した治療を行います。心の症状が強いと思われる方はぜひご相談ください。
ーメンタルヘルスは課題が尽きません。企業の理解が進めば、もっと働きやすくなると思います。
木下小規模な事業者が精神科医を嘱託医とするのは、経営的に難
しいこともあるでしょう。当院は事例ごとの相談に応じますし、顧問契約も可能です。働く人の心と暮らしを守る地域貢献を目指していますのでご一報ください。
ーありがとうございました。
ナチュラルトーンの心安らぐインテリアで統一
待合室ではソファでゆったり寛げる」
スマイルクリニック イムス東京

東京都中央区日本橋2-1-10
柳屋ビルディング 2F
TEL. 03-5542-1860
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