オシゴトいろいろ

ご家族と医療スタッフの架け橋になる

動揺するご家族に寄り添い考えや気持ちの整理をサポート

当院は循環器疾患専門の病院で、入院患者さまの40%以上が緊急入院です。急性心筋梗塞や大動脈解離、大動脈瘤破裂などの治療は一刻を争うため、医師も看護師も救命処置を優先せざるを得ず、治療当初にはご家族の心情に配慮する余裕を持てません。状態の安定していた患者さまが急に重症化してしまった場合も同様です。

一方で、ご家族は状況を十分に把握できずに気持ちが混乱し、時間が切迫する中、生死に関わる意思決定を求められることもあります。そのようなご家族に寄り添い、医師との架け橋となるのが「入院時重症患者対応メディエーター」です。情報を共有しながら信頼関係を築き、ご家族と患者さまの適切な意思決定をサポートします。

メディエーター部門の立ち上げは2025年4月。看護師2名(患者サポートセンター看護師1名、救急外来看護師1名)と私の合計3名で活動を始めました。医師にタイミングよくご家族への説明を求めたり、ご家族が医療スタッフに疑問や考えをうまく伝えられるように支援するほか、感情を我慢せずに表に出す手助けをすることもあります。自分が医療スタッフに悪い印象を与えると治療に影響するのではないか、病院の都合のよいように説得されてしまうのではないかと不安を持つご家族もいらっしゃいますが、入院時重症患者対応メディエーターの立場は中立です。ご家族の言葉や感情を否定したり、良い・悪いのジャッジをすることなく、考えや気持ちの整理をお手伝いし、共有・確認したことを医療スタッフに伝えます。

先日、退院予定の患者さまが急変したとき、ご家族は処置が終わるのを待ちながら茫然とされていました。そこで、お話をして心をほぐし、医師の説明に同席。医師の退席後は理解した内容や不安なことをお聞きしました。

翌日の説明や面会にも同席すると、ご家族はメディエーターのことを「精神的にフォローしてくれる人」と認識されたようです。はじめ泣きながら話していた方が、落ち着いた様子で帰宅されるのを見て、役割を果たせたかなと思いました。

ご家族の言葉を否定せず静かに耳を傾ける

看護師のメディエーターと情報共有、意見交換することで多角的な視点でのサポートが可能になる

入院時重症患者対応メディエーターについての院内勉強会と職員アンケート調査の結果を2025年度第15回IMS事務学会にて発表

患者さま・ご家族と医療スタッフの間のギャップを埋める

私は子どもの頃に祖母が介護で悩んでいる場面を目にして医療ソーシャルワーカー(MSW)を志し、社会福祉士になりました。入職当時は想像以上に命に直結する現場に困惑することも。専門用語も多く、医師や看護師に尋ねながら知識を吸収しました。

医療福祉相談室のMSWとして退院支援に関わる中で気づいたのは、「まだ治療中なのに退院の話をしないといけないの?」と戸惑う方が多いこと。早くから退院後を見据えゴールを共有することで、よりよい医療を提供でき、療養環境も整えられるという医療スタッフの考えとのギャップを感じました。「メディエーターならそれを埋められるのでは?」と思う看護師もおり、看護部長に相談すると強く賛同してくれてメディエーター部門が実現しました。

活動開始からまだ1年ほどですが介入要請は増えています。すべての患者さま・ご家族が安心して医療を受け、暮らしの場へ戻ることができるよう、メディエーターによる支援体制を整えていきたいと思います。

日本臨床救急医学会の講習会修了証

入院時重症患者対応メディエーター

突然の病気や事故により医療機関へ搬送された重症患者のご家族に寄り添い、医師などの医療スタッフとの間に入ってサポートを行う。「メディエーター(mediator)」とは「調停、仲介を行う中立的な第三者」のこと。看護師、社会福祉士、公認心理士、薬剤師などが担当することが想定され、活動に際しては日本臨床救急医学会などが実施する養成講習会などを受講・修了していることが望ましいとされている。2025年末までに同学会の講習会を約1,800人が受講。
2022年度の診療報酬改定で、入院時重症患者対応メディエーターによる支援に対して重症患者初期支援充実加算が設置され注目が集まっている。

イムス葛飾ハートセンター