オシゴトいろいろ

急増する心不全の患者さまに減塩、栄養を中心にサポート

心不全は塩分が大敵。続けられる減塩を提案

心臓には血液を全身に送り出すポンプ機能があります。高血圧や心筋症、心筋梗塞、弁膜症、不整脈といった心臓病が原因でポンプ機能が悪くなるのが心不全です。

一度心不全になると、心臓がもとの状態に戻ることは残念ながらありません。しかし、急な悪化(急性増悪)を予防する生活を心がければ、生活の質(QOL)を保ちながら長生きすることもできます。そのためのサポートをするのが心不全療養指導士です。

高血圧や、心不全の急性増悪の予防で重要なのは塩分を摂りすぎないこと。

コンビニやスーパーの惣菜・弁当、外食などは特に注意が必要ですが、食べてダメという訳ではなく、上手に食べることが大切です。惣菜は味がしっかりついている場合が多いので、まず一口食べてみて、味が物足りないようなら少しずつ調味料を足すことをおすすめします。外食で手打ちの麺類を召し上がる際には、うどん(生麺1玉分240g:塩分相当量約0.7g)から蕎麦(生麺1玉分230g:塩分相当量約0g)を選択していただいたり、漬物が好きな方はぬか漬けよりも浅漬けを選ぶと減塩になります。漬物を酢の物に替えればさらに大きく減塩できます。

食材の表面にだけ味付けをするのも効果的。下味を付けない白身魚にトマトソースをかけると美味しいですよ。スープを食べるときは、具材をたっぷりよそってスープは少しだけに。減塩調味料を使うことも、もちろん効果的です。

一つひとつは小さな減塩でも、毎日続けると塩分の摂取量は確実に減ります。

心不全療養指導士資格認定証

「予備軍」の方にも働きかけ心不全を減らしたい

心不全療養指導士の資格を取得しようと思ったのは、管理栄養士として循環器・心臓血管外科の病棟を担当する中、知識不足を感じていたから。この資格はハードルが高いと思って踏み出せずにいましたが、同じ病棟の薬剤師から「一緒に挑戦しない?」と誘われ、決意しました。

同期入職の仲間だったので心強かったです。2人とも今年3月に無事合格できました。

資格を取るための課題で一番大変だったのは「症例報告書」の作成です。栄養科と他部署の先輩や同期に相談したり、添削してもらったりして規定の5症例分を提出。この作業を通してカルテを深く読み込めるようになったこと、患者さまの背景まで理解して指導できるようになったことは大きな財産です。

心がけているのは患者さま一人ひとりの事情に沿った療養の指導です。高齢になると三度の食事の支度も難しくなり、惣菜や弁当、カップラーメンばかりという方もいますが、「いけません」というのではなく、どうしたら減塩できるか、バランスのよい食事を摂れるか一緒に考えていきます。例えば、3食のうち1食だけでも宅配食にすると減塩になり、栄養バランスもよくなります。みそ汁が好きなら1日1杯、ぬか漬けがどうしても食べたいなら二度洗いしてなど、方法はいろいろあります。

高血圧などの生活習慣病が心臓病や心不全につながることは一般の方にまだよく知られていません。 「予備軍」の方も食事を中心にサポートし、心不全になる患者さまを少しでも減らせたらと思っています。

病院での治療食の塩分は1日6g。食事指導では「入院中にその味に慣れることで、退院後の味付けの目安を把握することができる」とアドバイス。退院の際に患者さまにあわせた指導をしている

心不全療養指導士

日本循環器学会が2021年度より認定制度を開始した資格。超高齢社会となり、心不全患者が急増する中、心不全の発症・重症化予防の療養指導を行う医療専門職に必要な基本的知識の習得、技能の向上を図ることを目的に創設された。心不全による増悪・再入院予防、生活の質(QOL)の改善を図ることを目指す。管理栄養士のほか、看護師、保健師、理学療法士、薬剤師、公認心理師、臨床工学技士、歯科衛生士、社会福祉士が受験でき、eラーニング受講、書類審査(症例報告書)、認定資格試験等を経て認定される。24年度の合格率は72.36%。これまでに8,226人の心不全療養指導士が誕生している。

春日部中央総合病院