「救急認定薬剤師」は、救急医療の薬物療法に関する高度な知識と技術、倫理観を持っていると認定された薬剤師です。現在認定されているのは、全国で217名(2021年9月14日現在)。三次救急医療機関の「救急救命センター」で活躍する人が多いのですが、私は当院の「ICU(集中治療室)」に所属しています。
集中治療とは、生命にかかわる重篤な患者さまを対象に、濃密な24時間態勢で、先進医療技術を駆使する集中的な診療のこと。室内には、モニタリング用機器や生命維持装置など、高度な機器が整備されています。
患者さまは内科、循環器科、外科、脳神経外科、整形外科など各診療科から入室しており、病態は実にさまざま。担当の医師、看護師、臨床工学技師など多職種でチームを組み、治療に臨みます。
容体が急変するリスクが常にあり、薬の代謝能力も個人差が大きいので、薬剤の種類と量の選定には、細心の注意が必要です。ほとんどの方は経口で水分を摂ることも難しく、点滴ルートを確保し、複数の薬剤が干渉し合わないよう、タイミングを図って投与しなければなりません。
また、痛みや息苦しさなど、苦痛緩和も大切な仕事。特に人工呼吸器を装着した方にはオピロイド(麻薬性鎮痛薬)によるコントロールが大切で、薬剤師として投与量の管理は欠かせません。
経験を積んできたおかげで、チームの中でも、私が積極的に提案するシーンも増えてきました。やりがいを感じています。
患者さまが快方に向かってきたら、胃腸の機能を維持・回復させるため、医師や管理栄養士と相談し、経鼻経管栄養を導入。経口での服薬が可能となります。
糖尿病など基礎疾患のある方は、現在の治療と、それまでの服用していた持参薬との兼ね合いを心配されるので、わかりやすく説明するのも私の役目。患者さまと落ち着いてコミュニケーションが取れるようになると、一般病棟へ移る日も近く、チームには安堵と笑顔が戻ってくる。嬉しい瞬間です。
オシゴトいろいろ
救急認定薬剤師
救急認定薬剤師
生命の危機にある患者さまを支援
緊急性の高い現場で全力投球
人命を救う医療の世界へ
今年入職した新人薬剤師に心肺蘇生術を指導。緊急時における医療従事者の心構えを説く
小学生のころから、医療関係の仕事に憧れていました。医師として主役を張るような性格ではないし、数学と化学が得意だったので薬学部に進みました。
学んだジャンルで面白かったのは「薬物動態」。ヒトの体が薬物を代謝・分解したり排泄したりするプロセスの研究ですね。大学院の修士課程まで修め、急性薬物中毒と治療法にも詳しくなりました。
現在、入職11年目。救急認定薬剤師の資格を取ったのは3年前です。一刻を争う厳しい臨床現場で臨機応変に動けるよう、薬学の知識をアップデートするには、いい機会だと考えました。超急性期の患者さまと、健常者との薬物動態の差異など、自分の専用ジャンルなども生かせます。
緊急時の心配蘇生と高度な気道管理、薬物投与を担うACLSプロバイダー資格も持っています。大地震や台風など激甚災害時には、当院も地域の医療拠点となりますし、そのための薬剤の備蓄は、責任者として整えました。
医療従事者の本分は、どんな状況下でも救命に尽くすことです。
近年は後輩の薬剤師がスキルアップできるよう、さまざまなチャンスの提供を心がけています。
IMSグループで救急認定薬剤師は2名。進化著しい薬学の知識と技術で、今後も貢献に努めます。
救急認定薬剤師
一般社団法人日本臨床救急医学会によって認定される薬剤師資格。救急領域での薬物療法に関する高度な知識、技術、倫理観を通して、国民の健康に寄与する。薬剤師として病院・診療所に5年以上勤務し、うち2年以上救急医療に従事している人が対象。指定の講習会と認定試験などを経て認定される。
https://jsem.me/training/recged_pharmacist.html
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