オシゴトいろいろ

精神科のお薬の専門家として活躍

「精神科医療なら北小田原病院」を目指して

 私が精神科薬物療法認定薬剤師の認定を目指したのは、前任の薬局長に「北小田原病院をIMS(イムス)グループで一番の精神科病院にしよう!
 精神科薬物療法認定薬剤師が在籍することで、病院としての特色もつくることができる」と声をかけられ、その志に魅力を感じたためです。 精神科薬物療法認定薬剤師の認定は難関ですが、だからこそグループ内認定第1号になり、「精神科医療なら北小田原病院」といわれるようにしようと考え、チャレンジを決意しました。それが2018年のこと。認定まで6年かかりましたが、これでも最短に近いのです(認定条件は下記参照)。
 一番大変だったのは、精神科の患者さまに対する指導実績を30症例以上提出することでした。患者さまの協力を得ながら5年かけて実績をつくり、認定試験にも合格して2024年10月に認定されました。

副作用の少ない薬を提案し感謝されることが増えた

 認定を受けてよかったと思うのは、たくさんの専門知識が身につき、患者さまにより合った薬を提案できるようになったことです。
 精神科の薬は新しいものがどんどん開発されていて、同じ効果で副作用の少ない薬が増えています。例えば、精神科の薬は副作用で便秘になることが多いのですが、便秘になりにくい薬に変え、緩下剤を飲まなくてよくなった患者さまもいます。
 また、抗精神薬や抗うつ薬などでは性欲低下などの性機能障害、女性の場合は月経不順などが現れやすいのですが、こうした副作用が出にくい薬も使えるようになっています。
 ある患者さまは、薬を変えたら精神疾患の症状がよくなった上に性欲低下も改善し、「実は10年以上悩んでいたけれど相談できずにいたんです」と、涙を流し感謝してくれました。
 ただ、精神科の薬は簡単に変えられないこともあります。薬を変えることであまりよくない影響が出てしまう可能性もあるからです。現在病状が安定している場合は、主治医や患者さま自身、ご家族と一緒に、慎重に考えていくことが大切です。
 ⅠMSグループ薬剤師の意識も変わり、精神科薬物療法への関心が高まっていると感じます。精神科ワーキンググループという組織をつくってグループ病院の薬剤師向け研修会を年1回開いているのですが、参加者数が以前の2倍以上に増加。研修会後のアンケートでは、明日からすぐ使える内容で良かったという意見が多く寄せられました。また、グループ病院の薬剤師から精神科の薬について相談を受けることも増えています。
 今後は研修会を年2~3回に増やすほか、当院を研修施設として整え、精神科の薬に詳しい薬剤師を育てるプランもあります。認知症の人が増えて急性期の病院でも精神科の薬を使うことが多くなっているので、薬剤師全体の知識を高めることに貢献できたらいいなと思っています。
 精神科の薬を飲んでいる方に伝えたいことは「継続は力なり」です。精神科の場合、薬を中断して症状が悪化してしまうと、治療を再開しても精神状態のベースが以前よりも低下してしまうことがほとんどです。
 今は1ヵ月に1回の服用で済む薬や、貼り薬などもあるのでぜひ薬剤師に相談してください。お薬を飲み続けるのは大変ですが、一緒に満足度の高い治療を目指しましょう。

精神科薬物療法認定薬剤師の認定証

学会発表にも積極的に取り組む

精神科薬物療法認定薬剤師

 一般社団法人日本病院薬剤師会により認定される。精神科薬物療法に関する高度な知識と技術を身につけることによって、精神疾患患者の治療と社会復帰に貢献することを理念とし、精神疾患に対する薬物療法を安全かつ適切に行うことを目的に、2008年4月に創設された。
 精神科薬物療法認定薬剤師になるための条件は、薬剤師の実務経験を3年以上有すること、日本病院薬剤師会(日病薬)の会員であること、日病薬病院薬学認定薬剤師であること、規定の講習会などを所定の単位(40時間、20単位)以上履修すること、精神疾患患者に対する指導実績が30症例以上(複数の精神疾患)を満たすことなど。その上で認定試験に合格することにより認定される。認定者は約200人(2025年10月現在)。

北小田原病院