オシゴトいろいろ

人工呼吸器などの管理で患者さまの生命を守る

呼吸治療関連機器の管理を専門的に担う

 病院には多種多様な医療機器があります。技術の進歩により高性能な医療機器が増え、今の医療にはそれらが不可欠です。医療機器のスペシャリストである臨床工学技士は、現在、7つの専門領域と3つの認定領域があり、専門領域の1つが呼吸治療関連専門臨床工学技士です。 呼吸治療関連専門臨床工学技士は、人工呼吸器や酸素療法に用いる装置、コロナ禍で多くの人に知られるようになったECMO(エクモ)などを専門的に扱います。
 当院での役割は主に2つです。1つは、人工呼吸器を使用中の患者さまのベッドサイドで呼吸状態を確認しながら機器のセッティングや動作確認を行い、肺の中で酸素と二酸化炭素が常に適切に交換されるようにすること。人工呼吸器を使用している入院患者さまは常に10人くらい。その方たちの呼吸と関連機器の管理を行っています。
 もう1つの役割は「医療機器管理」です。人工呼吸器は生命維持管理装置という区分けがされていて、厳密な機器管理が必要な医療機器になります。味覚を除いた五感を駆使して医療機器の安全を担保します。病院では「あたりまえ」に医療機器が動作していますが、その裏では、臨床工学技士が医療機器の管理を行うことで「あたりまえ」を維持しています。

病棟スタッフが人工呼吸器を適切に扱えるようアドバイスすることも大切な仕事

機器の故障、停電、災害・・・「もしも」に備え万全を期す

 呼吸治療を専門にしようと思ったのは、どのような病気も進行して全身状態が悪化すると、最終的に呼吸状態が悪くなってしまうからです。呼吸関連機器に精通する臨床工学技士はあらゆる診療科、そして赤ちゃん(新生児)から高齢者までの幅広い知識が求められます。専門性を高め、さまざまな診療科や職種と連携することで、病院全体の呼吸管理の質向上に貢献できると考えました。
 資格を取得したのはIMSグループの横浜旭中央総合病院に勤務していた2013年。受験資格を得るための講習では新生児用の機器についても学びましたが、扱った経験がなかったため、仲間を頼りに情報収集して勉強しました。合格率は10~15%程度。合格したときはうれしかったですね。
 呼吸治療関連専門臨床工学技士が病院にいると、地域医療連携の質も上がります。例えば、患者さまが転院されてくる際、グループ病院以外の紹介でも先方の臨床工学技士から十分な情報が提供され、受け入れ後の呼吸管理、治療やケアがスムーズに行えるようになりました。
 医療機器を管理する上で気を付けているのは、突然の故障、停電や災害への対応です。呼吸関連の機器は生命に直結するものなので、補助電源(バッテリー)に切り替わる機能が付いていますが、万が一の場合に備えて機器の配置などを工夫しています。
 呼吸治療関連専門臨床工学技士が必要とされる場は、病院の手術室や処置室から今後は在宅医療へも広がっていくと考えられます。知識の更新や地域貢献を促進するために“呼吸マニア”の仲間と立ち上げた「一般社団法人神奈川呼吸療法研究会」は毎回約2,000人の受講者が参加する全国規模の組織となり、日本集中治療医学会で発表もしました。

5月に開催された日本臨床工学会の シンポジウムでは司会を担当

呼吸器治療関連専門臨床工学技士

人工呼吸器や酸素療法に用いる装置、ECMO(エクモ)など、呼吸関連の医療機器を用いた治療に専門的に従事する臨床工学技士。高い専門性を発揮することにより、医療の安全性と有効性が保たれ、また、他の医療職や臨床工学技士を指導できる立場の人材を育成することを目的に創設された。公益社団法人日本臨床工学技士会 JACE学術機構が認定。認定領域の実務経験を5年以上有し、既定の講習を受講して認定試験に合格すると認定される。

IMS(イムス)グループ 医療法人財団 明理会 鶴川サナトリウム病院