オシゴトいろいろ

五感で楽しむ料理で食べる人を笑顔に

病院や介護施設で好評のパフォーマンス

病院・介護施設向けメニューの開発と食事の提供を行うアイフーズが、出張料理サービスを開始したのは2022年。介護老人保健施設のお花茶屋ロイヤルケアセンターで、フルーツガスパチョなど夏のおやつ3種を提供したのを手始めに、これまでに12回ほど実施しました。
板橋ロイヤルケアセンターではパンケーキを利用者さまの目の前で焼いて、選べる2種のソースで仕上げ、新越谷病院ではマグロの解体ショーを行って刺身や寿司を提供しました。パンケーキの甘く香ばしい匂いや、すし飯の匂い、シャリ切りの音など、五感で食を楽しんでいただけるよう様々なパフォーマンスに挑戦しています。
利用者さま一人ひとりにオムライスを作ったときは、私たちの姿に「ホテルに勤める息子と重なった」と言ってくださった方もいました。バターの香りあふれるオムライスはご自身でソースをかけ、プラスチック製の安全なナイフで切るとふわとろの卵があふれるなど、口へ運ぶまでの行為を楽しめる工夫も。こうすると作業療法にもなるんですよね。
コロナ禍で外出ができなかった頃は、施設でこんなに美味しいものが食べられるなんて……と涙を流した方もいます。また、お粥しか食べなかった方が天津飯をたいらげ、看護師が驚くというできごともありました。

まぐろの解体ショーでは12kg超えのマグロを用意し、自前の包丁でさばいた

コロナ禍をきっかけに和食店からアイフーズへ

2020年4月、新型コロナウイルス対策として都内の飲食店等に営業時間の短縮および休業が要請され、私が当時勤めていた和食店は休業しました。給料は補償されていたものの、家にいることが苦手なタイプで2日ともたず、アルバイトを探しました。いろいろなことにチャレンジしようと、最初は当時需要が増していた運送業界へ。3ヵ月間続けてやっぱり料理の仕事がしたいと思っていたとき、八王子の病院で調理師を募集していると聞き、手を挙げたのです。実は妻が看護師で、その知人からの情報でした。
厨房の若いスタッフに調理を教えてほしいと言われました。その頃には一般の飲食店も営業再開していたのでダブルワークです。もともと勤めていた銀座の店で私は土日休みだったため、土日を中心に働き、1年後に正社員としてアイフーズに誘われ転職を決めました。
普段はメニュー開発などに携わっています。管理栄養士、栄養士中心の献立部が作成した試作指示書をもとにテストキッチンで試作。調味料や食材の調整などを繰り返して最終的な献立に落とし込みます。
料理の味は、調味料の配合で大きく変わります。病院や介護施設の食事は1日あたりのエネルギー(カロリー)、たんぱく質、塩分などの量が決められていますが、数字だけで配合を考えてしまうと味がいまひとつに。指示書通りに作ってみて、バランスの悪いところを具体的に指摘して変更を提案します。調理師である私の役割は、料理の味や仕上がり、盛り付けをレベルアップして、患者さまや利用者さまに美味しく食べていただくこと。献立部と丁寧に擦り合わせを行い、基準量の中で料理の質を高める努力をしています。
食事は人間にとって大きな楽しみです。視覚、嗅覚、味覚など五感が刺激され食が進めば、栄養状態の維持や改善という食事の目的も達成できます。
料理人としての私のやりがいは患者さまや利用者さまの笑顔です。店舗で磨いてきた技術や感覚を生かし、美味しい食事を届けたいと思っています。

お花見メニューとして提供したちらし寿司。
デザートはフルーツガスパチョ

株式会社アイフーズ

病院や介護施設向けの給食事業を展開し、2020年7月に新工場を開設。IMSグループ29施設に1日約2万食を提供する(2024年3月31日現在)。
食品衛生の国際基準であるHACCP(ハサップ)に基づく衛生管理を徹底し、安全性はもちろんのこと、味や見栄えの面でも質の高い食事の提供に力を入れている。
出張料理人の活動は患者さま・利用者さまだけでなく施設スタッフにも好評。

株式会社アイフーズ