突撃!!イムス探険隊

外部照射・組織内照射・腔内照射・FDG–PET/CT
最新のがん放射線治療を提供

がんの放射線治療を 総合的に提供

PET/CT装置。
PET撮影とCT撮影が同時に行える

PET/CT検査控室。FDG(放射性医薬品)が全身に行き渡るまで1時間ほどイスに座って安静が必要

PET画像の例。左肺上葉に腫瘍と疑われる黒い影が認められる

PET画像と、体幹をX線で輪切り状に撮影するCT画像をコンピュータで融合したPET/CTの画像。腫瘍の活性が高いほど、赤く描出される

新松戸高精度放射線治療センター(SMARTセンター)は、新松戸中央総合病院に新設され、2024年1月から、本格稼働しています。外部照射をはじめ腔内照射、組織内照射、核医学治療まで網羅した最新のがん放射線治療を提供。一度の撮影でほぼ全身のがん検査が可能なFDG‒PET/CTを導入しています。
PET(陽電子放出断層撮影)は、がん細胞が多量のブドウ糖を取り込み、増殖する性質を利用した核医学検査です。ブドウ糖と似たFDGという検査薬に、微細な放射線を出す物質(放射性同位元素)を結合させた放射性医薬品を静脈注射で投与。がん細胞がFDGを代謝する様子を、放射線を目印に撮影し、CT画像と重ね合わせて診断に役立てます。一度の検査で全身を撮影できるのが利点です。
放射線診断専門医の縄野繁医師は「CTやMRI検査ががんの位置・大きさを判定するのに対し、FDG‒PET/CTではがんの勢い、悪性度、浸潤の様子、リンパ節や他の臓器への転移などを広範囲に確認。がん治療に重要な情報を獲得できます」と語ります。
小さく活性の低いがんは写りにくいため、他の検査機器と合わせて活用するのが一般的です。

外部照射と内部照射で がんの根治を目指す

リニアック(X線加速器)を搭載したガントリーが、寝台の周りを自在に動いて照射するTrueBeam

中央のカートのような機器が内部照射(腔内照射と組織内照射)のためのRALS。寝台に横たわる患者さまのCT画像とリンクして、腫瘍に照射する

右図は、TrueBeamによる次世代型IMRTを用いた精緻な前立腺がん治療計画。左図の従来の照射による治療計画と比べると、近接する膀胱や直腸の線量が大幅に低下していることが分かる。前立腺内の腫瘍部位の線量も増加しており、より高い制御率が望める

ZAP-X®。脳腫瘍や頭頸部がんに特化した最先端のX線照射装置。宇宙船を思わせる斬新なデザイン

ZAP-X®による聴神経鞘腫に対する治療計画。放射状に広がる線はX線の入射方向を示し、非常に高い線量集中性により周囲の正常組織の線量は極限まで低下することができる

がん治療では原子核物理学に通暁した医学物理士の成田雄一郎氏が、伊丹純センター長陣頭指揮の下に綿密な治療計画を策定。放射線の強さや角度、総線量などコンピュータを駆使し最適化して制御する万全な体制です。
外部照射の主役はTrueBeam(トゥルービーム)。腫瘍をピンポイントで狙う定位放射線治療( SRT )と 、周辺臓器を極力避けつつ腫瘍の形状を立体トレース照射する強度変調放射線治療(IMRT)および強度変調回転放射線治療(VMAT)を、短時間かつ高精度で実施する最新機種です。
腫瘍の位置は呼吸や生理活動などで動きますから、それを追尾する画像誘導機能や、呼吸同期機能を搭載。円形のガントリーが自在に動き、最適化した角度、線量、タイミングでX線を照射。正常細胞への影響を最小限に抑えることで、腫瘍に必要十分な線量を当てることが可能です。
また、血液がん治療である造血幹細胞移植の前処置として、免疫制御のために行う全身照射にもきめ細かく対応します。
一方2024年5月に始動するのは脳腫瘍と頭頸部がん治療に特化したZAP‒X®︎(ザップエックス)。国内稼働は3台目というハイエンド機種です。ドームの中で、小型リニアック(X線加速器)が患者さまの頭部の周りを360度自在に動き、さまざまな角度からX線を腫瘍に集中する定位放射線手術(SRS)を行います。
がん以外に脳動静脈奇形、本態性振戦、三叉神経痛などの脳疾患治療に道を拓くと期待されます。
SMARTセンターの大きな特徴は内部照射を得意とする点。腫瘍の至近距離または腫瘍に直接、放射線源を挿入・刺入する究極の高精度放射線治療です。
使用機器はβ線を放出するイリジウム192の超高放射能線源を搭載した遠隔操作密封小線源治療機RALS(ラルス)。まずCT撮影下で「腔内照射」なら腟や子宮、食道など管腔臓器内にアプリケータを挿入、「組織内照射」なら腫瘍に直接ニードルを刺入。各々をRALSとチューブでつなぎ、線源を遠隔操作で移動させ腫瘍に放射線を照射し、がん細胞の遺伝子を破壊します。
β線は、体内では数ミリ以下しか飛ばないため、正常細胞への影響はほとんどありません。
当センターは病態により外部照射と内部照射を組み合わせる例もあり、放射線治療によるがんの根治
をハイレベルで目指しています。

Staff Voice

患者さまの個別化医療に貢献

放射線科
縄野 繁
放射線診断専門医
がんの活性を映し出すFDG-PET/CTは、個々の患者さまに合ったオーダーメイド治療を計画するために欠かせない検査機器。ただし1回の撮影で全身のがんをすべて発見する夢の装置ではありませんから、がん検診でも複数の検査を組み合わせる必要があります。
なおFDGを別の放射性医薬品に換えることで、アルツハイマー病の診断も可能です。

放射線治療の普及に尽力したい

放射線科
成田 雄一郎
医学物理士
放射線に強弱をつけ、がん細胞だけを狙い撃つIMRTの開発研究に20年以上携わってきました。がん種によって手術と同等以上の効果が得られるエビデンスがありま
す。放射線治療は高齢者や持病がある方でも負担の少ない治療。もっと多くの医療機関で積極的な活用が進む手本となれるよう、本センターで実績を上げたいと思っています。

探険隊長から...

がん放射線治療の目覚ましい進化に圧倒されました。特に脳腫瘍に特化した高度な放射線治療や、病巣を的確に狙う内部照射が行える医療機関は数が少なく、地域への貢献が期待されます。

新松戸中央総合病院