メディカル・ズームイン

安心・安全・快適な
お産をかなえる周産期棟

出産にあたり、女性が医療機関に望むのはまず医師や医療スタッフとの厚い信頼関係。そして高度で安心・安全な産科医療。
最新の設備とプライバシーに配慮した快適な空間。開設されたイムス富士見総合病院周産期棟はその希望をかなえます。
陣頭指揮を執る小野義久産婦人科部長に妊産婦さまが知っておきたい医学知識もうかがいました。

イムス富士見総合病院

  • 日本産科婦人科学会 専門医・指導医
  • 日本周産期新生児医学会 専門医(母体・胎児)
  • 母体保護法指定医、臨床研修指導医
  • 埼玉医科大学医学部客員准教授

総合病院の 強みを生かした 充実の周産期棟

ー 2024年3月「安心・安全なお産」の実現を目指し、「周産期棟」が開設されました。入口を入ると広々したロビーに柔らかな自然光があふれ、妊産婦さまをリラックスさせてくれます。

小野  周産期棟の特徴は大きく二つがあります。まず26の診療科を擁するイムス富士見総合病院の強みを生かし、各分野の専門医が参画するハイレベルな周産期医療を構築すること。私の他に日本産婦人科学会の専門医が2名。また日本周産期・新生児医学会の新生児専門医である清宮綾子医師も常駐しています。帝王切開や無痛分娩に備えて麻酔科の医師は4名。もともと当院は24時間救急対応可能な小児科、小児外科があり、地域から信用を得てきた実績があります。

ー もう一つは?

小野 妊産婦さまの心身に寄り添った安心・安全・快適な医療環境を用意することです。医師だけでなく看護師、助産師、管理栄養士、理学療法士などの多職種が、妊婦健診、分娩、入院、退院後の産婦・乳児の健診から育児相談まで、切れ目ないケアに努めています。

ー 施設としては、プライバシーと感染症予防に配慮した5室の個室待合が画期的ですね。トイレ完備で採尿、採血、胎児の心拍モニタリングができ、医師の診察後の会計処理までOK。

小野 分娩室もLDR(Labor・Delivery・Recovery)タイプを導入しました。陣痛・分娩・出産直後の回復まで、移動することなく同じ部屋で過ごせるので、心身への負担が最小限。分娩までは家族とソファでくつろいだり、好きな音楽を聴いたりでき、リラックスして分娩に臨めます。配偶者の立ち合い出産や、一部ですがフリースタイル分娩にも対応可能です。

ー 病院スタッフと妊産婦さまのコミュニケーションも大切にされていますね。

小野 妊娠が順調に進んでも、つわり、便秘、腰痛などマイナートラブルは多くの方が経験します。産後は授乳や育児に関する課題がいろいろ。そこで助産師が相談に乗る「助産師外来」と「授乳と育児サポート外来」を設けています。
一方2017年に発表された医療データベースのリンケージ研究では、出産後1年未満に自殺し女性は国内で2年間に92名と報告。事態を重く見た国は「産後うつ」対策の一環として産後ケア事業を開始しました。
当院も日帰りと宿泊による「産後ケアサービス」を提供。母子で来院し医師による赤ちゃんの健康チェックと助産師のアドバイスが受けられます。納得いくまで懇談でき、赤ちゃんを預けて休息することも可能です。

ー 出産・育児には不安と迷いがつきもの。味方になってくれる施設があれば心強い限りです。

小野 日々の受診でいかに妊産婦さまと信頼関係を築くかが肝心です。本格的な支援の必要なケースもありますから、問診の中で生活背景を聞きとり、社会的ハイリスクな方をスクリーニングします。配偶者はいるか、親族のサポートが受けられるか、うつ病などの既往はないか、経済的に困窮していないか。
院内では月に一度「子ども家族支援委員会」を開き多職種で情報を共有。必要に応じ、地域の保健センターや行政の福祉部門と連携します。当院だけでなく地域全体で見守る体制が必須。近隣の医療機関や市の保健師、保育士、児童相談所などのメンバーが集い、定期的に勉強会を開いています。

知っておきたい 出産の知識と 合併症の治療

小さな疑問や不安にも親身に応える

分娩を迎えるまで家族でリラックスできる環境



小児科医長で日本周産期新生児医学会専門医(新生児)で
ある清宮綾子医師


「頭のかたち外来」を開設
ヘルメット治療が受けられます

当院の周産期棟では「頭のかたち外来」で、赤ちゃんの頭のかたちやゆがみについて診察できるようになりました。変形の程度によっては「ヘルメット治療」という選択肢もあります。赤ちゃんの頭の形に合わせて形やサイズを調整できる医療器具で、効果と安全性は確認済みです。
気になる方はぜひ当院外来にご相談ください。
診療日は毎週金曜日。診療受付時間13:30~
16:00(診療開始14:00~)〈完全予約制〉

赤ちゃん一人ひとりの計測データをもとにカスタマイズされて届けられる「べビーバンド」

ー 妊産婦さまから寄せられる質問や、知っておきたい合併症があると思うので、代表的な項目について教えてください。まず逆子は帝王切開での出産となりますか?

小野 はい。37週を過ぎても逆子=骨盤位だと基本的に帝王切開を予定します。経腟分娩では新生児の死亡・合併症リスクが高いことが知られているからです。逆子を治すため、医師がお腹を押して回転させる「外回転術」がありますが、稀に胎盤がはがれる例があるため、当院では行いません。
出産間近に頭位に戻っている方もいますから、手術直前の超音波検査は必須です。

ー 無痛分娩のメリットとデメリットを教えてください。
小野 無痛分娩は背中の硬膜外腔という部位に麻酔薬を注入し、陣痛の痛みを低減する分娩法です。〝いきみ〞のタイミングは把握できますから、出産した実感は得られるでしょう。痛みのストレスから解放され、リラックスして臨める、疲労が少ないなどのメリットがあり、希望する方が増えています。時に陣痛が弱くなったりするために、陣痛促進剤が必要になることもあります。
また、赤ちゃんが産道を通過する時にうまく回転できないことがあり、鉗子分娩や吸引分娩となる率は通常分娩より若干高くなります。
当院では産婦人科医と麻酔科医の二人体制で、あらかじめ出産日を設定する計画分娩で対応します。

ー 双子の妊娠・出産はハイリスクですか?

小野 生殖医療の発達もあり、双胎妊娠の割合はおよそ1%。早産や後述する妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病のリスクが高いことがわかっています。37週未満が後期早産児、34週未満が早産児。2500g未満:低出生体重児、1500g未満:極低出生体重児、1000g未満:超低出生体重児として出生する可能性があります。
ちいさな赤ちゃんは体温維持、呼吸機能、吸啜力、消化機能などが未発達で、手厚いケアが欠かせません。多胎と判明したら、当院ではNICU(新生児集中治療室)を完備し高次医療を提供できる周産期母子医療センターや大学病院に、速やかに紹介します。
出産を扱う医療機関には、規模や設備、スタッフに応じた役割分担があり、当院も母子の安全を最優先に対処します。近い将来、新生児専門医の清宮医師を中心にNICU開設を目指しており、低出生の赤ちゃんも受入れ可能となる予定。

ー 妊娠高血圧症候群とは、どんな疾患でしょう?

小野  血圧が収縮期1 4 0 mmHg以上、もしくは拡張期90mmHg以上だと妊娠高血圧と診断されます。薬で制御しにくく、母体の腎機能障害、脳出血、子癇(痙攣と失神)、常位胎盤早期剥離など深刻な症状に至ることが。胎児発育不全や胎児死亡例もみられます。
原因は胎児に酸素と栄養を運ぶ胎盤の血管の形成不全とされ、母体は血流を補うべく血圧が上昇。細い血管がダメージを受けるため、さまざまな症状が表れるのです。
丁寧な全身管理が求められ、降圧剤などの治療で改善しない場合は、妊娠の継続は困難となる場合があります。妊娠高血圧症候群のリスクのある人は、診断が確定する前に、早めに高次医療機関へ紹介する必要があります。

ー 妊娠糖尿病について教えてください。

小野 胎盤から放出されるホルモンhPLには、糖代謝ホルモン・インスリンの働きを阻害する性質があります。このため母体は糖をエネルギーとして十分消費できなくなり、血糖値が上昇。子宮内胎児死亡、巨大児、出生後の低血糖などのリスクが高まりハイリスク妊娠となります。
自覚症状が乏しいので妊婦健診の血液検査は必須。食事療法や運動療法では血糖値をコントロールできず、インスリンを注射で補うレベルとなったら、高次医療機関の受診が推奨されます。
当院には糖尿病内科の専門医が在籍しますから、近い将来、分娩までお引き受けする体制が整う予定です。
ー 着実なステップアップが楽しみです。ありがとうございました。

イムス富士見総合病院