明理会中央総合病院の消化器内科では、胃がんの予防と早期発見・早期治療を目指し、最大の原因とされる「ピロリ菌対策」に尽力。
新型CMOS(シーモス)イメージセンサーを搭載した最新鋭の上部消化管内視鏡を経鼻・経口タイプ計4台導入し、患者さまの期待に応えています。
安達庄吾医師に解説いただきました。
ピロリ菌除菌と内視鏡検査で
胃がんから身を守る!
医師紹介

明理会中央総合病院
消化器内科
安達 庄吾 医師
- 日本消化器内視鏡学会 上部消化管内視鏡スクリーニング認定医
- 日本消化器内視鏡学会 大腸内視鏡スクリーニング認定医
- 日本ヘリコバクター学会 H.pylori感染症認定医
- 日本医師会認定産業医
胃がんの原因となるピロリ菌感染に要注意
ー明理会中央総合病院 消化器内科では、常勤医の増員に加え、最新鋭の上部消化管内視鏡も導入され、診療体制のさらなる充実が図られました。読者の注目度の高い「胃がん」から身を守る方法を教えてください。
安達結論から申し上げると基本は二つで、一つは早期発見・早期治療のため定期検診を欠かさず受けること。もう一つは胃がんの一番の原因である「ピロリ菌感染」の有無をチェックし、陽性なら除菌を行い予防に努めることです。
近年、胃がんは減少傾向にあります。2000年に肺がんが、がんにおける死亡率1位となるまで、年間5万人以上が亡くなっていましたが、2024年のデータでは3万7867人。高齢化により全がん数が増えている中で、これは喜ばしいことです。
※国立がん研究センター発表による
ーなぜ減っているのでしょうか?
安達禁煙、減塩など生活習慣の変化もありますが、やはり大きいのはピロリ菌対策が進んだことでしょう。2013年にピロリ菌除菌が保険適用となり、多くの方が積極的に受けています。その際には感染性胃炎確認のため内視鏡検査も行いますので、早期の胃がんが見つかり、治療・寛解するチャンスも増えました。
ーでは、まずピロリ菌について教えてください。
安達正式名称は「ヘリコバクター・ピロリ」。グラム陰性菌で、胃の粘膜にすみついて炎症を引き起こし「萎縮性胃炎」に至ります。30〜50年の持続感染でその一部ががん化し、発症リスクは感染していない人と比べて5〜10倍。特に東アジアに分布するピロリ菌は、欧米のピロリ菌より病原性が高いといわれます。
ほかに胃潰瘍、十二指腸潰瘍、低悪性度胃MALTリンパ腫などの原因ともなります。
ー経口感染ですか?
安達ありふれた菌で、上下水道が完備する以前は井戸水などから感染しました。国内の感染者は推定3000〜3500万人ですが、高齢者ほど感染率が高く、1940年代生まれは約64%、2000年代生まれは約7%との報告があります。
多くの細菌は胃酸で消失されますが、ピロリ菌はウレアーゼという酵素を出してアンモニアを産生。胃酸を中和し胃粘膜に長時間居座ります。感染時期は胃酸の分泌量が少ない乳幼児期がほとんどで、除菌しない限り自然排除されることは稀です。感染した親族が、赤ちゃんに口移しや食器の共有で食べ物を与えると、唾液を介してうつりますので注意してください。
ー検査方法と除菌方法は?
安達検査は①呼気 ②血液 ③糞便のいずれかを採取して行います。①は検査薬の服用前後の呼気を専用パックに吹き込み、ピロリ菌の出すアンモニアなどの有無を試薬で確認。②と③は、ピロリ菌に対する抗体の有無を調べます。
除菌は胃酸を抑える薬と、2種類の抗菌薬を1日2回、1週間服用。1次除菌で9割以上が除菌に成功しますが、不十分なら抗菌薬の種類を変えて2次除菌を実施します。内視鏡検査を伴うので、消化器内科を標榜し、内視鏡検査を施行している医療機関を受診しましょう。
ピロリ菌のイメージ図

体長2・5~4マイクロメートル。鞭毛(べんもう)をプロペラのように回転させ、らせん状に移動する
検診は、X線撮影より高精度の内視鏡検査を
ー胃のがん検診はバリウムを服用してのX線検査と、内視鏡検査があり、選択に迷います。
安達消化器内科医の立場から、内視鏡をおすすめします。X線検査では微小な病変部の分析に限りがあり、早期のがんが見えにくい可能性があります。
当院の新型CMOSイメージセンサーを搭載した最新鋭の内視鏡は最大拡大倍率125倍。解像度を高める明るさ補正、テクスチャー強調、色調強調の3機能(TXIモード)、紫や緑の狭帯域光(きょうたいいきこう)を照射し、粘膜表層の血管走行や微細構造を強調する機能(NBIモード)などを備えています。
食道から胃、十二指腸の前半部を観察しますが、まさに「手に取るようにわかる」という表現がピッタリです。
ー検査にどのぐらいの時間がかかるのですか?
安達大きな問題がなければ5分ほどで終わります。病変部があれば必要に応じ組織を内視鏡に搭載された器具で採取し、病理診断に回します。その場合の検査時間は8〜10分ほどです。胃の粘膜には痛点(痛みを感じる神経)がないため、組織の採取に痛みを感じません。
このプロセスは、胃の不調を訴えて受診した患者さまへの精密検査と同じです。
画像は40〜60点撮影し、消化器内科でカンファレンスを実施。がん等の疑いで開腹手術の可能性を認めるケースでは、病理診断の結果も踏まえ、消化器外科も参加し慎重に検討を重ねます。
ー内視鏡はどうしても苦しいという印象があります。
安達当院は経鼻内視鏡も導入しましたが、スコープ先端の直径は5・4㎜(汎用タイプは9・9㎜)。
ソフトな素材を用い苦痛は大幅に低減されています。鼻に疾患のある場合は経口で用いることも可能。評判は上々です。「内視鏡検査は二度とやらない!」と嫌悪感を持たれては、今後の診療に差し支えますので、どうしても違和感の強いデリケートな方は、弱い静脈麻酔下で実施します。
ー内視鏡検査で、医師はどのような情報を得ているのですか?
安達発赤、びらん、萎縮、過形成などの所見を通し、胃潰瘍と胃がんの区別、胃壁に沿って進行する悪性のスキルス性胃がんの可能性、ポリープ(隆起性病変)の種別などを行います。
たとえば白っぽいポリープは「胃腺腫」と呼ばれ、一部は前がん病変の疑いがあるため病理検査の対象です。赤っぽい「過形成性ポリープ」は主にピロリ菌感染を背景とし、除菌で消失する例が多くみられます。胃壁と同色なら「胃底腺ポリープ」。ほとんど良性で治療の必要はありません。
ーいろいろわかるのですね。
安達膨大なデータを解析した「胃炎の京都分類」という研究成果があり、私たち内科医のバイブルです。ピロリ菌感染を疑う所見は過形成性ポリープのほか、胃液が白っぽく粘っこい、胃粘膜の襞が分厚く太い、胃の出口に近い部位(胃前庭部)が鳥肌状、などがあります。正確な診断には前出のピロリ菌検査が必要ですが、患者さまの病態をさまざまな角度から把握できます。
ー内視鏡検査における胃がんの所見はいかがですか?
安達所見例としては粘膜の潰瘍やびらん、隆起や陥没、色調の変化、粘膜表面の顆粒状変化、微少血管の走行の乱れなどがあげられます。内視鏡で胃がんが疑われた病変の組織を採取し、最終的に胃がんかどうか診断します。
さらに病態によっては造影CTやMRI、PET検査などで、がんの深達度や転移の有無を確認する必要が出てきます。
新型CMOSイメージセンサーを搭載した最新鋭の経鼻用上部消化管内視鏡

極細の経鼻用内視鏡2本と、汎用内視鏡2本を新たに導入。
経鼻用は先端直系わずか5.4mmながら、汎用タイプに比肩する解像度を持つ《 写真提供:オリンパスマーケティング株式会社》



早期の胃がんなら内視鏡下手術で治療可能
ー胃がんは、早期であれば内視鏡下の手術で根治する可能性があるとお聞きします。
安達胃がんの深達度は、上の表の通り6段階に分類できます。
早期に該当するのは粘膜にとどまるT1aと粘膜下組織にとどまるT1b。T1aとT1bのうち深達度が浅いものが、内視鏡下手術の対象です。この段階であれば、所属リンパ節への転移は、まず心配ありません。
開腹手術と比べて、体への負担が格段に少なく、がん切除後も胃はそのまま残せます。
胃切除を受けると、少しずつしか食事が摂れない、胃もたれがする、食べたものが逆流するなど食生活に影響が出る、ビタミン・ミネラルが不足し骨粗鬆症や貧血を合併する、などの危険性があります。
ー胃の内視鏡下手術はどのような手術ですか?
安達病変部の下に生理食塩水やヒアルロン酸ナトリウムを注入してがんを浮き上がらせ、スネアという輪状のワイヤや、高周波メスで丁寧に剥ぎ取ります。切除した腫瘍を病理検査し、取り残しの有無を確認。必要であれば再手術となります。
ー根治する例は多いのですね?
安達粘膜に留まる早期の胃がんは高確率で根治に至ります。
早期胃がんは一般に自覚症状がほとんどありません。国は50歳以上の方に2年に1度の検診を推奨しています。また胃の痛み、不快感、食欲不振、食事がつかえるなどの症状がある場合には、検診を待たず、必ず医療機関を受診してください。
ーありがとうございました。
明理会中央総合病院
