医療スタッフ 座談会

今、医療は加速度的に進歩しています。高度化した医療を適切に提供するためには、医師はもちろんのこと、医療スタッフ(医師以外の医療職)にもより専門的な知識やスキルが必要です。IMSグループに勤務する医療スタッフはおよそ2万3千人。その進化と今後の展望について、各部門の代表が率直に語り合いました。

医師以外の職種にもある専門制度や認定制度

清水
医療の高度化に伴い、医療スタッフにもより専門性の高い知識や技術が求められるようになっていますね。
小田
保険使用できる医療用医薬品は1万3千品目以上あり、薬局などが扱う一般用医薬品と合わせると2万5千品目ほどの医薬品が日本で使用されています。令和4年度だけでも136の新医薬品が国内で承認され、薬物療法の方法も複雑化しています。このような状況の中、高度な薬物療法を安全かつ効果的に実施していくために、専門領域の薬物療法のスペシャリストとして専門・認定薬剤師が誕生しました。当グループでも、がん・感染・栄養・糖尿病・腎薬物・救急などさまざまな専門・認定薬剤師が活躍しています。
清水
どのような場面で専門性を発揮していますか?
小田
例えば、がん薬物療法認定薬剤師であれば、患者さまやご家族に薬の作用や副作用を分かりやすく説明するだけでなく、副作用確認なども行っています。薬物療法中に起きる症状や不安を直接お聞きして対応するほか、医師に処方提案を行うこともあります。また、がん薬物療法にかかる医療費は高額になりがちですが、経済面の相談にも応えられるようにしています。
加藤
放射線技師にも認定制度があり、X線CT専門技師、検診マンモグラフィ撮影認定などさまざまな種類があります。私たちにとって大切なことは、精度の高い画像の提供などもさることながら、患者さまに低被ばくかつ苦痛の少ない検査を提供することです。そのために、専門性の高い技師の育成に力を入れています。

テクノロジーの進歩がさまざまな恩恵をもたらす

清水
放射線検査・治療では、機器の進化が目覚ましいですね。
加藤
板橋中央総合病院が2022年に導入した次世代型CT「フォトンカウンティングCT」は、短時間で高画質の画像が撮影でき、被ばく量、造影剤の使用量とも少なくてすむ最新型です。また、新松戸中央総合病院では、2024年1月に最新鋭の放射線治療を集積した「新松戸高精度放射線治療センター(SMARTセンター)」をオープンする予定ですが、そこには、MRI誘導リニアックなど最新の放射線治療機器4台とPET‐CTを導入します。PET‐CTは今年10月に稼働予定です。 検査・治療機器の性能は、放射線技師に確かな知識と技術があってこそ引き出せるものです。質の高い画像を提供するために、教育プログラムを策定し、各種専門技師・認定技師の認定取得を後押ししています。
清水
テクノロジーの進歩は、栄養分野ではどのような恩恵をもたらしていますか?
佐々木
IMSグループのセントラルキッチン・アイフーズとともに「ニュークックチルシステム」の導入によって厨房業務が効率化され、栄養指導や摂食・嚥下支援など、患者さまのケアにより多くの時間を使えるようになりました。ニュークックチルシステムは、料理をチルド状態のまま食器に盛り付けトレーごとに専用カートにセットすると、配膳前に自動再加熱してくれます。温かいものは温かく、冷たいものは冷たく、作りたてのように提供できるため患者さまにもとても好評です。まだ一部の病院、施設での導入ですが、今後増やしていく予定です。
清水
業務の効率化はスキルアップにもつながっていますか?
佐々木
そう思います。管理栄養士にも、主に、がん、糖尿病、腎臓病、摂食・嚥下、在宅栄養などの専門分野別認定制度があり、その取得のための勉強時間を各自が確保できるようになります。当院の場合、入職3年目くらいから鶴川サナトリウム病院で「栄養サポートチーム(NST)研修」を受け、専門管理栄養士を目指す教育プログラムを実施しています。

これからも高度なチーム医療で患者さまの人生を支える

清水
リハビリテーション(以下、リハビリ)は早期開始がとても重要になっていますね。
角本
はい。治療開始と同時に始めることが当たり前になりつつあります。予定手術などの患者さまの場合は、術後の回復を見据えて術前から開始することも珍しくありません。ベッドで安静臥床のままだと、1週間で10〜15%筋力が低下するといわれていますし、精神的にも抑うつや無気力、不安につながる可能性があります。 そのため、動かないことによる心身の機能低下を予防するには早期のリハビリ開始が大切です。そして、質の高いリハビリをいち早く提供するためには、高度な専門性が求められますので、各職種に対応した認定制度やさまざまな認定資格が準備されています。 また、入院期間が短くなった今、退院後の生活と、在宅生活の継続をイメージしたリハビリの提供は必須になっています。IMSグループでは、病院と介護老人保健施設のスタッフが互いに学び合い、生活の場で本当に役立つリハビリの提供に努めています。
佐々木
退院後の患者さまの生活状況を知ることは、私たちも重視しています。どのような環境で、誰が日常の食事を作っているかによって、指導や支援の内容が変わってくるからです。 高齢男性で一人暮らし、高齢者の二人暮らしなどの場合は、看護師の退院前・退院後訪問指導に同行して調理の支援を行うこともあります。
角本
院内・グループ内の連携に加え、在宅医療や在宅介護のスタッフ、行政など院外の多様な職種との連携が不可欠です。患者さまやご家族も含めたチームで、患者さまが望むできるだけ自立した生活を実現することが、私たちの使命だと思います。 医療スタッフがそれぞれ専門性をさらに高め、例えば医師に対しても専門職の立場から積極的に提案することは、医師の負担軽減にもつながるのではないでしょうか。
小田
AIやロボットの活用がさらに進めば、調剤や医薬品管理などの対物業務から、処方提案や患者さま支援などの対人業務によりいっそう力を注ぐことができるようになります。患者さまの想いに即したポリファーマシー(多剤併用)問題などにも積極的に取り組んでいきたいです。
加藤
放射線科では、AIをまず予防医学で胸部X線読影に導入する計画です。医師の負担軽減とともに、結果面談の待ち時間短縮など受診者さまの満足度向上にも寄与するはずです。
佐々木
現在、患者さまの自宅での食事の栄養分析は管理栄養士が写真や記録用紙を見て行っていますが、AIなら短時間で解析できます。AIに任せられるものは任せ、患者さまのよりよい食生活、栄養管理、そして最後の一口まで美味しく食べるという人間の尊厳を守ることに、私たちの専門性を活かす――そうなる日が近づいていると感じます。
清水
医療の進歩とともに医療スタッフも進化しなければなりません。患者さまの人生を長いスパンで理解し、支えるという医療スタッフ本来の役割を果たすために、一人ひとりがチームを引っ張る意識を持つ「Our Team」の精神で邁進しましょう。

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