昨今は産業医療が注目され、従業員の健康維持・増進も企業の大切な役割の1つとなっています。中でも特に重要視されているのが、定期的に行われる健康診断です。健康診断を実施することで、生活習慣病の早期発見や予防、さらにはがんなどの大きな病気の発見も期待できるため、従業員の健康を守るためには欠かせません。
今回は、企業での健康診断の種類や項目、費用について詳しく解説します。
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企業の健康診断の実施は義務
労働安全衛生法第66条において、従業員の健康診断の実施は企業に課せられた義務であり、1年に1度は必ず実施しなければなりません。実施を怠ると企業側に50万円以下の罰金が科せられます。従業員側より健康診断の拒否があった場合でも、企業側の違反とみなされるため、注意が必要です。
また、健康診断は正社員のみならず、パート・アルバイト職員や有期契約の契約社員でも実施条件に当てはまる場合は実施義務が生じます。
職種 | 健康診断の実施条件 |
パート・アルバイト | 週の労働時間が正社員の3/4以上:実施義務あり
週の労働時間が正社員の1/2以上3/4未満:義務はないが実施が望ましい 週の労働時間が正社員の1/2未満:実施義務の規定なし |
契約社員 | 健康診断の実施義務規定はなし
※深夜業や高低温下の業務など特定業務に従事する場合は実施義務あり |
企業の健康診断の種類について
企業の健康診断には、一般健康診断と特殊健康診断の2種類があります。一般健康診断はさらに細かく項目が分けられているため、わかりにくい部分も多いです。
ここでは、企業に義務付けられている健康診断の種類について解説します。
一般健康診断
一般健康診断は、全ての企業で実施しなければならない「雇入時の健康診断」や「定期健康診断」の他、従事する職種や環境に合わせた「特定業務従事者の健康診断」、「海外派遣労働者の健康診断」も含まれています。
(1)雇入時の健康診断
正社員や週の労働時間が3/4以上のパート・アルバイト職員を雇い入れる際は、必ず実施しなければなりません。就職前に直近で受けた検査があっても法律上省略することはできないと規定されています。
(2)定期健康診断
1年に一度実施しなければならない健康診断です。項目は雇入時の健康診断と同様ですが、医師が必要ないと認めた場合や年齢によっては省略できる検査項目もあります。また、3ヶ月以内に他所で健康診断を実施した場合は、健康診断を省略できます。
検査項目 | 省略できる条件 |
身長 | 20歳以上の者 |
腹囲 | ① 40歳未満(35歳を除く)の者
➁ 妊娠中の女性その他の者であって、その腹囲が内臓脂肪の蓄積を反映していないと診断された者 ③BMI(次の算式により算出したものをいう。以下同じ。)が20未満である者 〔 BMI=体重(kg)/身長(m)2 ④自ら腹囲を測定し、その値を申告した者(BMIが22未満の者に限る。) |
胸部エックス線検査 | 40歳未満のうち、次のいずれにも該当しない者
①5歳毎の節目年齢(20歳、25歳、30歳及び35歳)の者 ➁感染症法で結核に係る定期の健康診断の対象とされている施設等で働いている者 ③じん肺法で3年に1回のじん肺健康診断の対象とされている者 |
喀痰検査 | 次のいずれかに当てはまる者 ① 胸部エックス線検査を省略された者 ➁ 胸部エックス線検査によって病変の発見されない者又は胸部エックス線 検査によって結核発病のおそれがないと診断された者 |
血液検査 | 貧血検査、 肝機能検査、血中脂質検査、血糖検査 |
心電図検査 | 35歳未満の者、及び36~39歳の者 |
※厚生労働省:「定期健康診断等における診断項目の取扱い等についてより抜粋
(3)特定業務従事者の健康診断
深夜業、有害物質の取り扱い、騒音や高低温下の業務など、身体に悪影響を与えかねない環境下での業務に従事している従業員に対しては、6ヶ月毎に定期健診と同様の健康診断を実施しなければなりません。特定業務は幅広いため、規定をしっかり確認する必要があります。
※労働衛生法第45条参照
(4)海外派遣労働者の健康診断
従業員を海外へ6ヶ月以上派遣する場合は、渡航前に定期健診の項目および医師が必要と認めた追加項目について健康診断を実施しなければなりません。帰国時にも同様の検査が義務づけられています。
特殊健康診断
特殊健康診断は、労働安全衛生法第66条に定められた健康診断を指し、身体に特に影響を及ぼす職業に従事する従業員を職業病や労働災害から守るために6ヶ月に1度実施します。
特殊健康診断には下記の項目があります。
・有機溶剤の取り扱い業務
・鉛業務
・特定化学物質の取り扱い業務
・石綿取り扱い業務
・粉じん業務
一般健康診断の項目
一般健康診断の項目は下記の11項目となります。
1,既往歴及び業務歴の調査
2,自覚症状及び他覚症状の有無の検査
3,身長、体重、腹囲、視力および聴力の検査
4,胸部エックス線検査および喀痰(かくたん)検査
5,血圧の測定
6,貧血検査(血色素量、赤血球数)
7,肝機能検査(AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GT(γ-GTP))
8,血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
9,血糖検査(空腹時血糖または随時血糖)
10,尿検査(尿中の糖および蛋白の有無の検査)
11,心電図検査
特定健診や特殊健診の場合はそれぞれ必要な項目が追加されることもあります。
企業の健康診断の費用について
健康診断の費用は、企業が100%負担する必要があります。ただし、健診項目以外のオプション検査を希望した場合や、人間ドックの実施、再検査などは従業員本人の負担となります。
社員1人にかかる健診費用の相場価格は、約10,000〜15,000円となっています。委託を請け負うクリニックの多くが相場価格内となっており、下記のような視点で委託先を選択していくと良いでしょう。
【健康診断の委託先選びのポイント】
・予約の取りやすさ
・健康診断の実施方法(巡回健診車の有無など)
・アフターフォローの充実度
・健診結果管理の簡便さ
企業の健康診断のご相談は「IMS Me-Life クリニック 渋谷」へ
健康診断は、企業に課せられた義務であり、従業員の健康を守るために必要不可欠です。
「IMS Me-Life クリニック 渋谷」では、多くの企業様の健康診断を担当したノウハウを活かし、安心・安全な診察や検査、万全なアフターフォロー体制の提供が可能です。
企業内の健康診断でお困りの方は、是非一度当院へご相談ください。