オシゴトいろいろ

医療材料の在庫管理を一手に担う物流のプロ

過剰在庫や有効期限切れによる廃棄を未然に防止

SPDとは、病院が使用する医療材料(治療やケアに必要な物品)、文房具などを一元管理する業務です。言い換えると、必要なときに、必要な物が、必要な量きちんと揃っているようにする仕事です。具体的には、在庫管理や払出業務、発注・入荷検品、過剰在庫や有効期限切れ・不良在庫の管理・削減のほか、仕入れ価格の交渉なども行います。日本でSPDを導入している病院はまだ一部ですが、今後は増えると考えられています。
病院で行われる治療やケアは、何か1つでも足りないとできないことがあります。SPDを導入することで、迅速かつ安全に、より質の高い医療を提供することが可能になります。
また、過剰な在庫を抱えたり、期限切れで廃棄してしまうのを防止できるため、無駄を削減して健全な病院経営につながります。
当院がSPDを導入したのは2011年です。A館8階にSPD倉庫があり、スタッフ5人が、院内で使われているおよそ4,000種の物品をコンピュータシステムで管理しています。手術室には専属のSPD担当者が必要となり、2023年2月から配属されました。

手術室専属SPDとして安全で質の高い医療を支える

手術室で使用する物品は特殊な医療材料が多く、使用頻度が低い物品も用意しておく必要があったり、高価なものもたくさんあります。何よりも、緊急手術などいざというときに、「○○がないからできない」というような事態は絶対に避けなくてはなりません。
私が配属される前は、看護師が現場の物品管理を担っていました。しかし、多忙な本来の業務のほかに、物品管理まで行うのは負担が大きすぎます。手術室専属を任じられたときは「システム管理をしているのになぜ?」と思ったのですが、実際に現場を見て専属SPDの必要性を痛感しました。
着任してすぐ手術室にあるすべての物品を洗い出し、数量をチェックすると、過剰在庫がかなりありました。不足しないように、多めに発注しているうちに溜まってしまったようです。余剰分はグループ病院で使ってもらうなど調整し、手術室スタッフに向けては発注と納期の基準を示しました。
物品は棚やコンテナに収まっており、物品ごとに発注用のラベルが貼られています。ラベルのところに、「残●個になったらラベルを剥がして台紙へ」と明記しました。
ラベルを台紙に貼るのも手間ではありますが、実践することで在庫が適正に保たれ、皆が安心してよい仕事ができます。
手術室の1,000種類以上にも及ぶ物品の名称や、何に使われるのかを覚えるのは大変です。
同じ手術でも医師によって使いやすい機材は異なるため、医師の入退職に伴って用意しておく物が変わることがありますし、ロボット支援手術など新しい手術法が導入されれば、そのための機材も増えます。都度、スタッフとコミュニケーションを密にとりながら皆が作業しやすい仕組みを考えるようにしています。経費削減と医療サービスの提供に支障が無いように両立させることは難しいですが、とてもやりがいを感じています。
患者さまと直接関わることはありませんが、SPDという仕事を通して医療に貢献していきたいと思っています。


台紙に貼られたラベルをスキャナーで読み取って管理。
データをもとに物品を発注する

SPDとは?

Supply(供給)・Processing(加工)・Distribution(分配)の略称。病院が使用する医療材料などの供給・在庫・加工などの物流を管理する方法。コンピュータシステムで管理することによって在庫や有効期限の把握が容易になり、過剰在庫や廃棄、作業負担を大幅に削減できる。

イムス富士見総合病院