2022年8月、板橋中央総合病院では国内総合病院としては初めて、次世代型のCT(コンピュータ断層撮影装置)、シーメンス社の「フォトカウンティングCT・NAEOTOM・AlPha」を導入しました。
このCTは、まったく新しいフォトンカウンティング検出器を採用しており、高検出感度・高分解機能により短時間で高画質な画像が撮影でき、被ばく低減、造影剤の低減で患者さまにより負担の少ない検査が可能となりました。
従来のCTは体を透過したX線を検出器で受け止め、可視光線→電流と2段階変換する必要がありましたが、フォトカウンティングCTは、X線を直接計測でき、情報量が格段にアップ。わずか1秒に満たない短時間撮影で、臓器、血管、血流、骨など成分の異なる組織を、細かく見分けることができます。
循環器内科では、狭心症や陳旧性心筋梗塞など「冠動脈疾患」の診断に役立てています。狭心症や陳旧性心筋梗塞とは、心臓の筋肉に酸素と栄養を運ぶ冠動脈が、狭窄または閉塞し、心筋に十分な酸素や栄養が届いていない病気でカテーテル治療が必要になる可能性のある病気です。
狭心症の一般的な症状は「胸痛」ですが、胸痛を起こす病気には消化器の病気やパニック障害など多くの病気があります。以前は正確な診断のため、入院の上でカテーテル検査が必要でした。
フォトカウンティングCTでは数mmの細い冠動脈も、血管の形状や内部の状態を高画質な画像で撮影できるので、狭心症や陳旧性心筋梗塞の診断に有用です。加えてCTは外来でできる検査ですので、病気の診断のために入院する必要がなく、カテーテル検査と比較して体への負担が少ないことが特徴です。もちろんCTで診断ができない場合には入院の上でカテーテル検査が必要になりますが、以前と比較して入院が必要となる患者さまの割合は少なくなっています。
次世代CT「フォトンカウンティングCT」導入で、迅速・確実・低侵襲な心臓検査を実現
驚異的な高画質画像で心臓疾患の診断がより正確に
低侵襲で、血管の石灰化やステントにも強い
フォントカウンティングCTは、撮影時間が極めて短いので、心臓の拍動による画像のブレを抑えることができます。
撮影時間が短いことは、被ばく量の低減にもつながります。従来の1/2〜1/3に減らせることは確実。また冠動脈や大動脈の撮影時には血管内に造影剤を注射しますが、この量も従来の半分程に減量が可能です。造影剤は腎臓に負担をかける可能性もあり、可能な限り減らし、患者さまの負担を減らすCTといえます。
血管のCT撮影でネックになっていたのは「石灰化」という動脈硬化です。動脈硬化とは、コレステロールなどが血管の内側に蓄積し、”プラーク”となって溜まり、動脈の中が狭くなった状態です。プラークはしばしばカルシウムが凝集して石灰化し、CTを撮影するとアーチファクト(散乱戦やノイズで画像が白くかすむ)が発生し診断の妨げになります。
フォトカウンティングCTは、被写体の成分を見分ける能力があるので、「石灰化部分」を除外した画像の描出が撮影の条件によっては可能であり、診断率を向上させます。
また、狭くなった冠動脈を広げるため、ステント(筒状の金属メッシュ)を挿入する治療を受けている方がいますが、この金属もアーチファクトの原因になり、これまではステントの中のプラークの評価はできないことが多くありました。フォトカウンティングCTなら、ステント(金属)によるアーチファクトの影響を最小限に抑え、診断率が向上します。
カテーテル治療が必要なほどではなくても、安藤脈の動脈硬化の進行レベルによっては冠動脈疾患に関係の深い糖尿病や脂質異常性の治療強化や、生活習慣病に対する指導の強化が行われる場合もあります。
このほか、対象となる心臓疾患は「大動脈瘤」や「大動脈解離」など。動脈硬化で傷んだ大動脈が大きく拡大した瘤の診断や進行の評価ができ、血管の内膜と中膜の間に亀裂が入る大動脈解離の診断や、治療方法の選択(手術や薬物治療の選択)に使用されます。フォトカウンティングCTは、短時間で病態をしっかり映し出し、治療方針の決定に大きく貢献してくれます。
Staff Voice
心臓検査をより低侵襲に!
新しい検査の可能性がある!
有村 洋一 放射線技師
探険隊長から...
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