オシゴトいろいろ

患者さまの立場で骨粗鬆症治療を支援

要介護の引き金に

骨粗鬆症は骨強度(骨密度×骨質)が低減し、骨がもろくなる病気です。ちょっとした転倒や打撲でも骨折しやすくなります。特に脚の付け根(大腿骨近位部)を骨折すると治るまで時間がかかり、ベッドに寝ているうちに筋力や内臓の機能まで低下。廃用性症候群のため要介護となってしまう方も少なくありません。
健康寿命を守るために、骨粗鬆症の予防と治療は、整形外科医療の大きな課題なのです。
当院では2018年に整形外科医と薬剤師が「骨粗鬆症チーム」を立ち上げ、服薬指導に力を入れ始めました。一方、私の所属する放射線科も市民公開講座を開いたり、地域のイベントで住民の方の骨密度を測ったりと啓発活動を開始。3年程前、院内で同じ志を持つ者が同委員会に集まり、現在は医師、薬剤師、看護師、診療放射線技師、栄養士、理学療法士、医療ソーシャルワーカー、医事課の多職種15名に発展しました。
そして全員が、骨粗鬆症に関する新しい医学情報を得て、患者さまを支援する効果的なノウハウを学ぶため、「骨粗鬆症マネージャー」の資格を取得、あるいは取得を目指しています。
大腿骨近位部骨折で入院する患者さまに、再度の骨折を起こさないよう適切な管理を行うことが、医療保険改訂で加算対象となったことも追い風になっています。


骨粗鬆症委員会のメンバー。定期的に連絡会を開き患者さまへのアプローチを確認

患者さまにアドバイスを

委員会のメンバーは、骨折の入院患者さまや、骨粗鬆症外来(予約制)の患者さまのカルテを共有しながら必要に応じて面談。治療に前向きになってもらえるよう、専門分野を生かしてアドバイスを行います。骨粗鬆症の薬にはさまざまな種類があるので、きちんと飲み続けられるよう、薬剤師は効能と服用法をガイド。
栄養士は栄養指導。日本人はカルシウム信仰が強く、牛乳と小魚さえ摂れば大丈夫と思いがちですが、骨は網目状のコラーゲン繊維=タンパク質にカルシウムが吸着してできています。良質なタンパク質も欠かせません。またカルシウムを腸から吸収するにはビタミンDが、カルシウムの骨への定着にはビタミンKが必須。バランスのとれた食生活が大事なのです。
理学療法士は運動指導。適度な運動は骨の新陳代謝を促して骨密度をUP。筋肉とバランス感覚を改善し、転倒を防ぎます。
診療放射線技師の役目は、骨密度検査と結果説明です。当院ではDEXA(デキサ)法という2種類のX線を照射する精密装置を使用し、脚の付け根周辺と、背骨の下部(腰椎)を撮影。患者さまの骨密度を、成人の平均骨密度及び同年代の骨密度と比較した測定値で示し、骨粗鬆症の診断につなげます。色分けされたグラフが出力されるので、とてもわかりやすいです。
半年~9ヵ月ごとに定期測定すると、治療と生活改善の効果を一緒に目で見て確認できますから、患者さまの“ヤル気”を引き出すことが可能です。
医療スタッフが問題意識を共有すれば、治療成績は着実に上げられるのだと、この2年間で自信を深めることができました。骨粗鬆症マネージャーが一人でも多く増えるよう、IMS(イムス)グループの他の病院にも働きかけたいです。そして「骨粗鬆症治療ならIMS」と、確かな信頼を勝ち得ていきたいと思っています。


モニター左が大腿骨近位部の画像。骨密度の数値はグラフ化され、正常=緑、境界域=黄色、赤=骨粗鬆症で示される

骨粗鬆症マネージャーとは?

看護師、薬剤師など国家資格を持つ医療専門職が、骨粗鬆症に関する知識と技術を高め、予防、診断、治療を提供したり、社会啓発活動を行ったりすることを目的に制定された専門資格。所定の講座を受講することで受験資格を得ることができる。一般社団法人日本骨粗鬆症学会が認定。2022年4月現在認定者は3,450名。

高島平中央総合病院